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Eva主宰・脚本作家の小林由木がつづるEvaの足跡
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     Eva主宰・脚本作家の小林由木がつづるEvaの足跡― 後藤とオレと生ごみ処理機 ―





    前回までのあらすじ:
    都市文化とサブカルチャーの申し子・小林由木と、青森の漁港のホタテの汁でできた男・後藤が友達になった。

    無事、というのも当たり前だが、私と後藤はNHKアクターズゼミナールを卒業した。

    実はこの時点で、私は役者よりは作家になりたい、と思っていた。よほどの天才作家でない限り、人の心を動かす作品を書くには社会人経験が必要だと思った私は、あっさり小さなPR会社に就職した。
    後藤も、卒業後しばらくして、新聞配達を軸にした生活から、新宿歌舞伎町の夜の街を軸にしたアルバイト生活にシフトしていった。

    青森漁港のイカの臭いに、歌舞伎町風俗街のイカの臭いがプラスされ、施しようがないイカ男となっていった後藤だったが、こういう一時の転落は、北国から上京してきた若者の常なので、仕方ない。

    さて、そんなこんなで、後藤と毎日のように一緒にいる、という事は無くなった。が、半年から1年に1回くらいは、飲みに行くなりなんなり、といった交流はしていたと思う。

    ちょっと、ややこしく思うかもしれないが、実はこの時点で「Evaという劇団」はあった。後藤も一役者として参加していた。これに関しての詳細は後述することになると思うので今は省くが、とにかく、その公演を見に行ったり等もしていたので、多分この時点で私は「Eva」と関わっていたことになる。


    そんな風に数年過ごしていた頃、後藤から連絡があった。「彼女ができた」という。卒業してから、特定の人はいなかったはずだから、これはめでたいと、彼女も含めて3人で飯を食う事になった。

    まあ、よくある話だが、ここでなんと、MLM(マルチレベルマーケティング)、いわゆるマルチ商法の勧誘をお二人から受けてしまったのである。

    マルチ商法の常で、どんなものなのかは一向に説明しない。「とにかく凄いから、一度セミナーに来てほしい or ある人に会って欲しい」それだけである。

    こういうことが初めてであれば、なんのことかさっぱりわからなかったかもしれない。しかし、これよりも前に、私は同じようなことを経験していたので、これがMLMだとすぐわかったのだ。

    正直少しショックだったが、これが後藤らしいところで「カモにしよう」という気はなく、「ほんとにいいから、一緒にやろうよ」的な気持ちらしい。

    結局、後藤とその彼女に変な気を使ったのと、とにかく一回そのMLMモデルの話を聞くまでは良いか悪いかの判断は下せない、という不要な公正心から、次回のセミナーに行く、という約束をしてしまった。

    セミナー当日の様子は、ご存知の方なら語るまでもないだろう。数十人の人が集まった渋谷の小汚い貸し会議室で、ソツはないんだろうが品もない「講師」という人が、ひとしきり商品の良さと「頑張ればもうかるよ」という話をする。

    講演後は、その会議室、もしくは近くのファーストフード店などに移動して、延々会員の人間から勧誘を受ける、というMLMお決まりのパターンだ。そもそもそこは「約30万円の生ごみ処理機」を売る、というもの。確かにecoブーム加熱の時期だったが、誰が好んでそんな高い生ごみ処理機を買うのか? そもそもMLM自体やる気がないのに、MLMのスキームとしてもできそこないだったのである。

    当然、私はやる気まったくなし。

    これを、いろんなあやしい人たちが、かわるがわる勧誘に来る。私も気が弱いので、ずっと「いや、いや、いや、いや」みたいな中途半端な拒否をする。これが何時間も繰り返された。

    最後に来た、ブスではないが品のない顔をした会員の若い女「私の時間はあなたみたいに安くないんです、私に無駄な時間を使わせないでください!」とまで言い放って、去った。この性格ブスは時間メタボになって死んでしまえばいいと思ったが、とにかく、その一言で「終了」という雰囲気が流れた。

    やり切れないのはこっちなのに、一緒にいた後藤の方が顔面蒼白になっている。

    その後、二人で渋谷駅まで歩く途中の歩道橋の上で、後藤の放った言葉と口調に驚いた。

    「ユキちゃんが、そんなに勇気がないと思わなかった!」

    ああ、これでもうこの人とは二度と会わないだろう、と思った瞬間である。

    まあ、なんてバカな人だろうとは思ったが、それでも、二十歳前後のコアな時期を、ほぼ毎日のように一緒に過ごした男である。正直、つらい気持ちだった。

    みなさん、おわかりでしょうか? そうです、私は後藤さんに傷つけられたのです!


    それなに、この人ときたら、しゃあしゃあと…。と、ここからは、また次回。

    完全に絶交状態にあった後藤と私を再び繋げた、奇跡の手紙の現物を紹介します! ひっぱるなぁ、俺。


    あ、ふと、今思った。

    この話は芝居などでもよくネタにしているし、後藤との間ではもはや昔の笑い話になってるのだが、この日の、この直後、どういう様子だったのか聞いてみたことはないな。

    後藤は会員の人にツメられたのかな? なら、よかったのに。

    今度聞いてみよう。


    今宵はここまでにしとうございます。次回の台本執筆で、寝てないんで。


     

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